あらすじ
イギリス、ロンドン郊外。17歳の少年が、なけなしの金で手に入れたのは、かつてWRC(世界ラリー選手権)で栄光を誇った三菱ランサーエボリューションVII。しかし、その栄光も今は昔、車は錆びつき、動くかも分からない無惨な姿だった。
「こいつを、絶対に走らせる」
その一心で、少年が独りレストアに挑み始めた矢先、隣に住むベテランメカニックのエルヴィスと出会う。少年の瞳に宿る純粋な情熱に、かつての自分と、手の届かなかったラリーマシンへの憧れを重ね見たエルヴィスは、ある条件付きで彼に手を貸すことを決める。
「このガラクタを直すために、何を残し、何を切るか。全部自分の頭で考えろ」
これは、ただの車の修理ではない。夢を諦めかけた少年が、一台の伝説的なマシンと、一人の師との出会いを経て、自分自身を取り戻していくための「試練」の始まりだった。
数日後、二人が見守る中、セルモーターの乾いた音と沈黙の末、ついに眠れる伝説の「4G63」エンジンが、不揃いながらも力強い咆哮を上げる。
「生かすも殺すもお前次第だ」
エルヴィスの言葉を胸に、少年の胸に熱い炎が宿る。一台の車と一人の少年の物語が、今、静かに回り始めた。