あらすじ
キングダム・トラスト・ニューヨーク事件 ~消えた代表と300億円の行方~
キングダム・トラスト・ニューヨーク事件
~消えた代表と300億円の行方~
摩天楼の名を借り
千代田のオフィスに灯る白い蛍光灯
パンフレットには金色の未来
「新規公開株」「先物取引」
耳に甘い言葉が滴り落ちた
八百の声が重なり
退職金を、学費を、老後の糧を
一枚の契約書に託した
紙の匂いと朱肉の赤
それは未来を約束する印に見えた
だが株券は虚ろで
明細は砂に描かれた数字
三百億は流れ去り
オフィスには破られた紙片と
埃の匂いだけが残った
「必ず戻る」と信じた声は
やがて告訴の声となり
木槌の音に変わった
しかし代表は姿を消し
夜の街に影だけを残した
残されたのは
崩れた生活と
信じた自分を責める嗚咽
そして雨音の中で響く問い
――あの三百億は、どこへ行ったのか。
――消えた男は、いまどこで笑うのか。
未来は閉ざされ
ただ静かな余韻だけが
雲間の光のように漂っていた