あらすじ
階段は数えれば十二段。
だが、この雑居ビルでは、必ず一段多い。
管理人が、清掃員が、事務員が――
皆、踊り場に届く前に落ちていった。
段差のズレは錯覚だと人は言う。
反響音のせいだと、湿気のせいだと、理屈を並べる。
それでも、夜に足をかければ、ぬるりとした冷たい手が足首を掴む。
十三段目に立つ女は、水底の死体のように髪を漂わせ、
ただ一言――『一緒に落ちて』と囁くだけだ。
怪異は、恐怖よりも静かに忍び寄る。
いつの間にか、段差の数が合わなくなる。
それが、ここに棲む女の仕業だ。
十二段しかないはずの階段で、今夜もまた誰かが十三段目を踏む。