あらすじ
首が抜ける。それは昔話の中だけのことだと、誰もが思っていた。
だが、会社の階段の踊り場で、あるいは深夜の台所で。
彼女の首は、音もなく身体から離れてしまう。
最初は驚きと恐怖だった。
次第に、それは上司の嘲笑や、書類の束よりも日常に紛れ込んでいった。
首が座らない――その事実のほうが、むしろ人間の関係を露わにする。
誰かが笑い、誰かが脅し、誰かが封じようとする。
だが首は、どこに座ればよいのかを探し続ける。
座を奪われた存在が、やがてどんな居場所を見つけてしまうのか。
それは怨霊の物語ではなく、静かに馴染んでいく怪異の話。
あなたの隣の席にも、すでに座っているかもしれない。