あらすじ
転生先は江戸時代。武器は珈琲豆
現代でカフェを経営していた田中美咲は、過労死の果てに享保6年(1721年)の江戸で商人の娘・お春として目を覚ました。
父の呉服問屋は大火で焼失し、一家は借金に苦しんでいる。絶望の中、蔵の奥で見つけた長崎土産の珈琲豆が、お春の運命を変えた。前世の知識を活かし、江戸初の「珈琲茶屋」を開業することを決意する。
しかし、珍しい「薬湯」に江戸の人々は困惑するばかり。それでもお春は諦めず、現代で培ったカウンセリングの心得で客の悩みに耳を傾ける。やがて蘭学医、武士、商人、遊女、子供たち——身分を超えた人々が、小さな茶屋に心の安らぎを求めて集うようになる。
特に、身分違いの恋に悩む若い旗本・藤原信之との出会いは、お春の心に新たな想いを芽生えさせる。だが、厳格な身分制度が二人の前に立ちはだかる。
商売敵の妨害、大火による店の全焼、将軍吉宗への献上——数々の試練を乗り越えながら、お春は珈琲という新しい文化を江戸に根付かせていく。
一杯の珈琲が繋ぐ人と人との絆。現代の記憶を胸に、江戸時代を懸命に生きる一人の女性の物語。