あらすじ

東京の郊外にある、いわゆる総合芸術系の大学の映画学科でシナリオを学ぶ俊は、生活のためのアルバイトも忙しく、また自身の内面の問題か、学業に四つに取り組めない様子であったが、その日、同じ大学の学生たちが企画した絵画・彫刻展を友人たちと見に来ていた。友人には、著名な監督の映画のオーデションに合格した演劇学科の浩介と、その彼女のピアノ科の由美、そして由美の友達で、俊がほのかに好意を抱くコントラバス専攻のイギリス留学目前の夏子がいた。 この展示会で、俊と夏子は、奇妙な粘土像に出会った。それは、小さな女の子が高く上げた右手で腕のない大人の手首を握っている、「親子」というタイトルの粘土像で、その作者は林田圭一という人物であった。林田はのちに俊と出会うが、美術学科の学生で、多くの学生たちが集まる賑やかな学食の傍でいつも独り石を掘り続けている偏屈な印象の男であった。この粘土像を見た時、夏子は何かを感じたのか、顔をこわばらせていた。あるきっかけで、林田と会話を交わすようになった俊は、林田が彫っては憎しみの感情を持って壊し、また彫っては壊すある顔の塑像に夏子の面影を見て驚く。 夏子のイギリス留学を送りに来ていた友人たちの中に林田が紛れ込んでいた。そして夏子が飛行機に乗る直前に、一枚の写真と、会って話がしたいという手紙を手渡していた。写真はあの粘土像の写真であった。夏子の父親が事業で失敗したため、イギリスから急遽帰国した夏子は俊と会った。林田の件を聞いた俊は自分が林田と会うことにした。そして、なぜあの像を作ったかを林田の口から聞き出した。

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小説を読もう2025/08/23
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