あらすじ

◇◆◇ 第二次世界大戦中、 家庭の鍋や釜までもが「お国のため」に 供出を強いられた。 ある母が差し出したのは、 赤銅色の蓋をもつ大切な鍋。 家族の食卓を支え、 父の不在を埋めていた唯一の器だった。 しかし鍋は二度と戻らず、 鉄屑として溶かされ、戦場で血に染まった。 食卓を囲む象徴は、 人を殺す鉄に変えられてしまったのだ。 戦後に生まれた語り手は、 一度も見ぬその鍋を「紅の蓋」と呼び、 母の記憶を受け継いでいく。 そこにあるのは懐かしさではなく、 取り返しのつかない喪失と、戦争の虚しさ。 ——紅の蓋は、もうどこにもない。 だが、その不在こそが、 最も雄弁に戦争を語っていた。

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カクヨム
カクヨム2025/08/23
  • 現在の作品紅の蓋