あらすじ
本作は JITTERIN'JINN の楽曲「SINKY-YORK」に着想を得て紡がれた物語です。
また、物語の一部には JITTERIN'JINN「自転車」(作詞:破矢ジンタ)の歌詞を引用しています。
Inspiration from JITTERIN’JINN “SINKY-YORK”
Lyrics © JITTERIN'JINN
幼馴染は、時に家族よりも近く、時に他人よりも遠い。
成瀬晴人と加藤絵里は、幼稚園のころからずっと一緒にいた。
互いの母親同士が同級生で、家族ぐるみの付き合い。呼び方もずっと「ハル」と「エリ」のまま。変えようとすら思わなかった関係は、兄妹のようでいて、決して兄妹ではなかった。
小学校、中学校、高校と隣にいた年月は、数えきれないほどの日常を重ねてきた証拠だ。
帰り道の坂道。くだらない会話。ノートの隅に描いてしまう「背中合わせの落書き」。
それは、口に出せない幼い願望の象徴であり、無意識のうちに形にしてしまった、彼自身の「未来」だった。
しかし時間は容赦なく二人を引き離していく。
エリは弁護士という夢を追って遠くの大学へ。
ハルは地元に残り、既定路線の未来を歩む。
卒業式の日、夕暮れの坂道で交わした「出発の日に教える」という約束。
そしてその日、彼の手に託された一枚の便箋には――わずか一行の言葉が記されていた。
「自転車に乗って あてもなく二人きりで あなたの後で ゆられてたい」
それは、ハルが幼い頃から描き続けてきた落書きの未来と重なる、あまりにも切なく、あまりにも小さな夢だった。
夢は重なった。けれど未来は離れた。
胸をえぐるような矛盾だけを残して、二人はすれ違っていく。
――そして5年後のクリスマス。
雑踏にあふれる街角で、首に巻いたマフラーの温もりが彼を過去へと引き戻す。
あの日から止まったままの時間。
あの日から消えない記憶。
その中でふと見つけた、懐かしい色。
群衆の中に見えたのは、エリだった。
声をかけようとした瞬間、雑踏がその声をさらっていく。
伸ばしかけた手は、ただ空を切り――それでも胸の奥には、あの便箋の言葉が生きていた。
「……自転車に乗って、あてもなく二人きりで――」
叶わなかった夢が、今も小さな灯のように彼の背中を押す。
たとえ未来は違っても、あの日の夢は消えない。
だから彼は歩き出す。
前を向いて。まるでロードショーのワンシーンのように。
――これは、ひとつの「恋が終わった物語」ではない。
「恋が終わらなかった物語」だ。
映画のフィルムのように積み重なる記憶と、クリスマスの街角で交差する現在。
2ビートのリズムで紡がれる、せつなくも温かな青春ラブストーリー。
まるでロードショーみたいに ― 2ビートのLoveSong ―
2ビートのエモーショナルな疾走感。
切なさとアオハル感。そして昂る32分連打。
楽曲「SINKY-YORK」が持つ世界観(自己解釈)を文字に落とし込んでます。