あらすじ
――プロローグ――
幸せになりたい。
本当に、それだけなのに。
特別なことを望んでいるわけじゃない。
誰かの隣で、笑って食卓を囲んで
夜には抱きしめられて眠りたい。
そんなささやかな日々こそが
女である私の願いだった。
けれど現実は、同じベッドの上で背中を向け合い、触れ合うことなく朝を迎える毎日。
言葉では「愛してる」とは
言わないけれど、優しさがないわけじゃない。
笑い合う時間もあるし
きっと彼も私を嫌ってはいない。
それでも――夜だけが
私を女ではなくしていく。
数ヶ月触れられていない身体は、寂しさを覚えるたびにひどく冷えていく。
鏡に映る自分の裸を見つめながら
誰にも求められない私は、もう枯れていく花のようだと思う。
心の奥で声を上げても、彼には届かない。
胸の痛みは、言葉にした瞬間に壊れてしまいそうで、どうしても飲み込んでしまう。
――幸せになりたい。
ただそれだけなのに
どうしてこんなにも苦しいのだろう。
愛しているのに、愛されている
実感が持てない。
彼と一緒にいることを選んでいるのに
孤独に沈んでいく。
矛盾する想いに押し潰されながらも
それでも私は願ってしまう。
枯れたくない。女であることを
まだ諦めたくない。
この胸に残っている熱を
どうか消さないで欲しい。
そんな祈りを抱えたまま
私は今日も眠れぬ夜を過ごしている。
同じベッドの中、彼の寝息を聞きながら。