あらすじ
少女が最後に見たのは、自分を英雄と讃えた民衆が、今度は自分を焼き殺すために掲げた松明の海だった。
裏切りと炎の中で一度死んだ聖女は、16歳の農民少女ジョアンとして、二度目の生を得る。
その腕に、前世の絶望を刻むかのように赤く疼くのは、女神の力を宿すという『聖痕』。
脳裏に蘇るのは、自分を火刑台に送った大司教ラヴァンの、あの慈悲深い微笑み。
――復讐を、果たさなければならない。
故郷を灰にした神権政治組織『紅のヴェール教産』を、この手で裁くために。
だが、彼女の魂に囁きかけるのは、茨の道を示す女神の声だけではなかった。
奈落の底から響く悪魔の声が、最も甘美で効率的な復讐を約束する。
「憎しみこそが、お前の最も正直な祈りだろう?」
集う仲間は、それぞれの正義と渇望を胸に抱く者たち。
過去の罪に苛まれ、秩序ある正義を求める追放騎士。
復讐のためなら非情な手段も厭わない、現実を見据える魔女。
そして、生身のジョアンではなく、完璧な『聖女』の伝説を歌い上げる吟遊詩人。
彼らとの絆は希望の光か、それとも互いを焼き尽くす業火か。
これは、灰の中から立ち上がり、憎しみの果てに真の救済を見出そうとする少女の、魂の戦いの記録である。