あらすじ
夜の外出はいけないことだと、少女は思い込んでいた。
理由は分からない。二十日前、「顧み浜」に漂着した彼女は、記憶を失っていたからだ。
そんな彼女を、家の外で誰かが口ずさんだある歌が、夜の散歩に連れ出した。
夜空の下を歩きながら、「迷い月」と仮の名で呼ばれる少女は、物思いに耽る。
別世界に迷い込み、別人に作り替えられようとしているような、不安と孤独。
それらから逃れたい、記憶を取り戻したいと願い、満月を羨んで見上げる彼女に、一人の青年が声をかけた。
鉱石の細工師だという彼は、少女に記憶の一部を取り戻すきっかけを与え、さらに多くを思い出せるようにと、三日後に開催される納涼祭、「銀の夜」に少女を誘う。
喜んだ少女はしかし、ある可能性に気が付いて、二の足を踏む。
過去を振り返ることを恐れるがゆえ、先に進めない。
同じ痛みを抱える二人が「顧み浜」で過ごした一夜、それは互いが自らの手で、未来へ漕ぎ出す契機となる。
……
超・妄想コンテスト「夏の夜」参加作品→優秀作品に選出していただきました。ありがとうございました。
※本作はフィクションです。
※表紙使用画像: pixabay様、イラストAC様(加工済)