あらすじ
都内の中堅銀行に勤める26歳の佐藤健は、厳しい営業ノルマに追い詰められ、つい魔が差して会社の資金を横領してしまう。「すぐに戻せばいい」という甘い考えから始まった不正は次第に膨らみ、眠れない日々が続く。
ある雨の日、健は古びた喫茶店で40代の男・加藤と出会う。彼は健の指先のインク跡から銀行員と見抜き、さらに健の罪の影をも察知する。かつて自身も横領で全てを失った経験を持つ加藤は、「恐怖こそがまともな場所に戻る道しるべだ」と語り、健に罪を告白して償うよう促す。
葛藤の末、健は勇気を出して上司に全てを打ち明け、厳しい叱責を受けながらも返済計画を立てる。不正が明るみに出たことで社会的信用を失うが、夜は再び眠れるようになり、少しずつ周囲の視線も変わっていく。
やがて健は、過去を悔い改めて経理コンサルとして再起した加藤の生き方に触れ、自らも誠実に生き直す決意を固める。信頼は失われても、再び積み上げることができる──そう教えられた健は、帳簿の数字だけでなく、自分の人生も正しく積み重ねていく第一歩を踏み出すのだった