あらすじ

裁きの間は、静かだった。 音がしないというより、音が許されていなかった。天井も壁も白く、そこに影一つ落ちない。法も宗教も、正義も悪も、すべてが曖昧になり、ただ知性と記憶と結果だけが問われる場所。 ひとりの男が立っていた。名前はかって*志岐連 (しきれん)**と呼ばれていたが、それももう意味を持たない。彼は死んだ。四十八歳の誕生日に。自分で命を絶った。 「志岐連。あなたは法学者として、この世界に多大 な影響を及ぼしました。あなたの著作『正義は誰のものか』は百七カ国語に翻訳され、八度も革命の導火線となりました。ですがーー」 審問官の言葉は淡々としていた。人間ではなかった。あらゆる「よって、あなたに転生の機会が与えられます」 「......なんだと?」 そして、志岐連は目を覚ました。 「あなた自身、その問いに答えを持っていなかった。正義とは何か。法律は理想を実現できるか。神は実在するか。人間は業から逃れられるのかーーあ なたは問い続け、死を選んだ」 志岐は黙っていた。ただ、己の死の理由が誰かに"理解"されているとい ことに、ほんの少しだけ驚いていた 「よって、あなたに転生の機会が与えられます」 「......なんだと?」 「次の世界では、あなたは裁判官であり、神であり、また罪人でもあるでしょう。あなたの知力と業は、次の世界で試されることになります」 視界が歪む。重力が失われ、記憶が分解される。 そして、志岐連は目を覚ました。 ーーそこは、剣と魔法の世界だった。 しかし、この世界には、法律がない。 あるのは「袖」と「力」と「輪廻」だけ。

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小説を読もう2025/08/20
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