あらすじ
この物語は実話を元に書き直した、小説です。昭和二十年三月八日、東京大空襲を逃れ、関東の片田舎に、長男三郎を頭に、弟五郎、妹奈々子、八重子、久美子の5人は疎開する、早く言えばこの時代の口減しの様なものだ。しかし、疎開先の甲府で空爆に遭う、七月七日未明、甲府市内は米軍のB29爆撃機によって廃墟の街と化してしまう。東京に一人残して来た母親の安否もあるが、16才の三郎と15才の五郎は食糧を求めて廃墟の街を走る。この時、人の情けというものを、しみじみと感じる。この食糧難の時代、自分達の食糧は自分達で捜さなければ成らない。三郎は大人達の中に入って、ヤミ屋と成り鈴なりの買い出し列車に乗り込む。ヤミ屋と警官の騙し合い。やがて三郎は東京に戻り、ヤミ市のおじさんに可愛がられ、誠心誠意お世話に成る。ある日宿屋の同部屋になった、麻子と言う洋パンを生活の糧としている女とめぐり逢い、偉せな生活もっかの間、不孝は次々と押し寄せて来る。廃墟の街をいくら走っても仔羊の様な少年にはあまりにも過酷な時代だったのだ。