あらすじ
自分を好きになる
自分が嫌いって悲しいね
自分を愛せないって寂しいね
朝 コップの水が喉を通る音だけが
ちゃんとした音で あなたを通り抜ける
窓にたまったほこりが 光の中で泳ぐ
スプーンが皿に触れて 小さな星みたいに鳴る
鏡はいつも正面を映せない
見えるのは 良すぎる自分か だめすぎる自分
どちらにも寄らない場所は 指先の温度くらい静かで
見つけるのに 時間が要る
午後 扇風機の風が肌を撫でて
塩の味が唇に残る
布巾のざらりが いまここを知らせる
呼吸は 入って 出て それだけで合格
好きになれない日にも 世界は薄く続いていく
湯気 石鹸 遠い電車の音
その全部が 「いていいよ」と言っている
夜 自分の名前を小さく呼んでみる
返事はなくていい 息が返ってくればいい
胸の奥に 親指ほどの灯がともる
手のひらでそっと覆う
きょうも いきのびた よしよし
明日のあなたが 今日のあなたを抱きしめるまで
わたしたちは この灯を守っていよう
愛せないままでも 生きていていい
愛せる日が来たら その続きを始めればいい