あらすじ

渡井(わたらい)ゆずです。俳人・花山離水(はなやまりすい)先生のご指導のもとで俳句を始めて、三年目になります。応募した俳句の賞で、特別賞をいただけたのですけど……作品への講評には『才能は確かだが、師匠の影響を強く受けすぎてはいないか。リスペクトと模倣の違いを今一度理解してほしい』とあって。胸が苦しくなりました。  けれど……。  賞に応募したわたしの連作にはじめて目を通された離水先生が、あるところで急に顔を青ざめさせたこと。 「ゆず君、ひとつ答えてほしい。この句は、『あれ』を見て詠んだのか?」  書斎のほうを指さしながら、かすれた声でそう尋ねてこられたこと。その日の稽古が途中で終わることになり、先生が屋敷の奥へ去っていかれたときの後ろ姿が、とっても小さく見えたこと。    それらのほうがずうっと、わたしの心をちくちくさせるのでした。  去り際に「しばらく旅に出る」と言い残された先生。わたしの連作のどれが、何が、あそこまで動揺させてしまったんだろう。先生は何を抱えておられるんだろう。先生のおっしゃっていた『あれ』とはなんだろう。わたしにできることは? かけられる言葉があるとしたら、それは?  ぜんぶの答えを探したくて、わたしは先生の書斎に足を踏み入れるのでした。「ゆず君ならいつでも入っていいからな」と言われているけれど、恐れ多くて一度も入ったことのない、あの場所に。  俳句の日(8/19)に合わせて、以前『境界アンソロジー /(スラッシュ)』(主催:百百百百 様)に寄稿した俳句のお話を投稿します――と思ってたら1日遅刻しました。全3話です。

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カクヨム2025/08/19
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