あらすじ
女子高校野球―――最後の全国大会。
彼と出逢ったのはその帰路、雨の恋乞緑道(こいこいりょくどう)でだった。
「達郎(たつろう)」―――それはもうこの世にいるはずのない……。
「あれは幻覚であり、見てはいけないもの」
自らにそう言い聞かせ、彼に背を向けた奈世(なよ)のそれからの日々はしかし、“大学へあがってからも野球を続けるべきか”という悩みと同時に、彼のことも頭の大部分を占め……。
それゆえから、自転車通学を避け、その緑道を徒歩下校する雨の日のみ、一目だけ彼の姿を見てもいい―――というルールを自身に与えた。
そんな、ほぼ毎日クラブ活動といった夏休み中に勃発した、緑道での痴漢事件。
被害に遭ったのは同じ白由(しらゆう)学園のダンス部女子生徒だった。
以来、緑道の使用に危惧を覚えた奈世だったが、やはり、彼への想いがその足を制御できず……。
結果、怪しい影は徐々に、彼女の身に近づいてきて―――。
重なる戸惑いを抱えながらも、自分を偽ることなく駆け抜けた、エースの一夏。