あらすじ
「前から思っていたんですが貴方、昔の知り合いに似てますねぇ」
涼やかな相貌に底知れぬ笑みを携えて稀代の剣士と呼ばれる男は微笑んだ。
「……気のせいじゃないか」
「新見、錦と言うんですがね、この名に聞き覚えは?」
ぬるり。
女のように生っ白い手が嘘も誠も絡めとるように妖しく俺の首に伸びる。
指の腹で本来ならあるべきはずなのにない俺の喉仏を撫でて、男はそれはそれは可笑しそうに破顔した。
“壬生の狼”なんて、こいつらはそんな可愛らしいもんじゃねぇ。
「“おかえりなさい”錦さん」
「……知らねぇつってんだろうが」
「失礼、間違えました。伊織さん」
「……」
「冗談ですよ、そんな怖い顔しないで。それじゃあまるで図星みたいじゃないですか」
新撰組創設期、乱暴狼藉が過ぎるとして局中法度により切腹させられた謎多き元新撰組局長新見錦。
そんな彼が現世に女として生まれ変わって、しかも自分が死んだ後の新撰組にタイムスリップしたら?
「最悪だ……」
なんて、これはそんなとんでも与太話。
2020.10.~
表紙絵挿絵自作