あらすじ
慶長二十年五月七日。
大阪夏の陣で真田幸村(信繁)が散った。
それと同時に徳川家康の天下は磐石なものとなり、以降泰平の世が二百五十年ほど続くことになる。
「悪人はわし一人でいい」
そう語ったのは家康だった。
事実、豊臣家を亡ぼさんと陰湿な謀略をしかけ、圧倒的な兵力で滅尽したのは悪の所業だろう。狸じじいの本領発揮であるが、これも、争いの種を根絶するためには仕方なかったといえる。
しかし、天下人たる家康の生涯に陰を与えたことは間違いない。
さて、幸村はというと、大阪の陣の活躍で、もののふとしての生涯を鮮やかなものとした。浪人風情が英雄と呼ばれるまでに駆け上がり、家康を追い詰める鬼気迫る姿は後年まで語り継がれていくこととなる。
しかし、その心のうちはどうだったのだろう。
「わしには、地獄こそが相応しい」
魂魄となった幸村は、三途の川を目の前にして想いを巡らす。
どうやら、その胸中は明るくないようだ。
表紙はフリー素材です。