あらすじ
ある夏の日、少年・翼は近所に住む頑固な老人・崇史の家で、戦争の話を聞くことになる。崇史は元・中国戦線の兵士であり、かつて新兵として過酷な戦地を経験していた。初年兵時代の理不尽な暴力や、現地住民との関わり、飢えと寒さに耐える日々、そして撤退戦で置き去りにした戦友・春田のこと崇史は語りながら、長く胸にしまい込んでいた戦争の記憶と向き合っていく。
春田は病に倒れ、自らを見捨ててでも仲間が生き残るよう願った青年だった。彼の家族に写真を届けようとした崇史だが、戦後の混乱の中で果たせなかった無念を背負い続けてきた。そんな崇史の心に、翼との対話が変化をもたらす。若き春田の思いと、自身が生き残った意味を語ることに見出した崇史は、語ることで未来に何かを手渡す希望を抱くようになる。
やがて翼は、小さな折り鶴を春田への贈り物として手渡し、崇史はそれを受け取る。戦争の記憶は過去のものではなく、語り継がれることで今を生きる若者に届いていく、そう信じて、崇史は静かに微笑むのだった。