あらすじ

空は鉛色に染まり、冷たい風が荒野を吹き抜けていた。 だがその風に混じるのは、ただの冷たさだけではない。遠くの空から、薄暗い雨粒が落ち始める。地面に触れると、闇色に染まり、まるで世界そのものがその身を震わせているかのようだった。 この世界には三つの国が存在する。 北方のヴァルクレイア帝国は、その圧倒的な攻撃力で名を馳せていた。強者こそが正義とされ、厳格な軍事国家として知られている。 西方のバスティオン帝国は、まるで壁のように鉄壁な防御を誇り、その国土は不落の城塞と化している。 そして南方に位置するヴェルメリア聖国は、神の怒りと慈悲を象徴する黒雨――“こくう”を信仰する厳格な宗教国家だ。 黒雨はこの世界の秩序を保つとされる神の怒りの証。 そして、その黒雨の降る地域でしか姿を現さない、忌まわしい存在がいる。 人々は彼らを「ラウカン」と呼ぶ。 ラウカン――それは神の使徒、天から遣わされた破壊者。 人類の罪深さを嘆き、滅ぼすために創られた化け物である。厚く硬い皮膚は通常の武器では一切傷つけられず、その存在自体が世界にとっての災厄だった。 彼らの出現と共に降る黒雨は、二、三時間でやむとされるが、その間に何が起こるのか、誰も知ることはできない。 そして、人類の中にはラウカンの力を利用し、己の欲望や理想のために動く者たちもいる。彼らは暗躍し、世界の秩序を揺るがそうとしていた。 薄暗い街の一角、ヴァルクレイア帝国の首都――騎士団本部の広間で、新たな一日が始まろうとしていた。 「…これで、キキョウ、君は正式に第一騎士団の副団長だ。」 厳かな声で告げられたその言葉に、青年は一瞬戸惑いの色を浮かべたが、すぐに硬く決意を胸に秘めた。 彼の名はキキョウ。凡人と思い込んでいた男が、今、新たな責務を背負い立ち上がる瞬間だった。 だがその背後には、冷徹な視線が静かに注がれていた。赤い炎のような瞳の少女――ストレリチア。 彼女は世界一の剣術を誇る第一騎士団の団長であり、己の使命以外には一切の感情を見せない。 強さだけが正義。弱さは切り捨てる。 その厳しさは部下たちを震え上がらせるが、誰も彼女の剣の前には敵わなかった。 二人の運命は、この日から静かに、しかし確実に動き始めていた。 黒雨の空の向こうで、ラウカンたちはその時を待っている――。

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小説を読もう2025/07/20
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