あらすじ
山のふもとで、また雷鳴が響いた。
朝から3回目だ、今日はやけに多い。
その轟音を聞き少し不安になった僕は、本を机の上に置くと、外の様子を窺った。
僕はママの言いつけ通り、外に出ることはない。食べ物も服も全部ママが用意してくれるから、外に出る必要がないのだ。
だから僕は年頃の皆のように友達と語りあったり、恋人と遊びに行くこともない。
毎日、こうして一日中、部屋に閉じ込もって受験勉強をしてる。こう若い体を持て余してると、ムラムラして行き場の無い欲望が勃興してくるのがわかる。
僕はアンニュイな気持ちになるとそっと本を置いた。頬杖をついた瞬間、溜め息がでる。
窓の外で草むらが少し揺れた。雑木林に大きな影が動く。
いまや国家や家庭という名の安定した楽園は失われ、関係性の渦の中で悲痛な叫びを圧し殺すだけ…。そんな新しき世代による、新しき時代のための本格恐怖小説。 (村田基 作品(1989) 改題)