あらすじ
世界には五つの種族が存在した。
自然を好む妖精種、山などの過酷な環境を好む竜種、海に生息する海生種、好戦的な個体が多い魔人種……そして何も持たない人間。
持つ者と持たざる者は相容れない。畏れと侮蔑が入り混じる、そうなれば衝突は避けられない。
だから各々に何か思うところがあっても暗黙の了解を破らぬよう口を噤んで生きてきた。
しかし、それは意図しない形で交わることになる。人間が繁殖し過ぎたのだ。繁殖すれば生活圏が広がる。
それによって土地を脅かされるのは魔人種だった。
何故最弱の名を冠する人間風情が、我が物顔で世界の土地を食い荒らしているのか。
魔人種は最弱の生物に攻撃を仕掛けた。撫でれば死ぬような脆弱極まりない存在の人間に対し、全力で。
その攻撃は世界の全てを揺るがし、砕き、破壊した。
結果、全ての種族が入り乱れる大戦に発展する。
人間には何もない。どうしようもなく弱い。
ただ、弱者だからこそ持つ、他種族よりも秀でた部分がひとつだけあった。
それは模倣。
魔人種、妖精種が好んで扱う魔法という手段を模倣によって手に入れたのだ。
だがしかし、会得できたのは総人口のおよそ〇.〇〇〇一%のみ。
やっと手に入れた反撃の刃だったが、これでは戦えない。同じ武器を持っても赤子が成人に敵わないのと同じこと。
人間に選択権はなかった。
魔法という新たな武器を手に入れた人間を生かし、次に繋げることしかできない。
――世界の天秤は傾き、数回の揺り戻しを経て再び均衡を刻み始める。