あらすじ
かつて地方の中堅商社「東陽産業」を改革によって右肩上がりに成長させた男、松永景司。執行役員として会社の中核を担いながらも、定年を迎えると潔く退職し、後進に道を譲った。だが、二代目社長の経営は現場を軽視し、信頼を損ない、会社は急速に没落。やがて倒産し、社屋は取り壊される。
瓦礫となったかつての職場を前に、景司は記憶を辿る旅に出る。営業部の仲間、総務部長、製造部長、秘書、得意先の担当者——それぞれが語る会社の「声」「手」「気配」「信頼」。景司はそれらを記録にまとめ、「働くとは何か」「会社とは何か」を静かに問い直していく。
そして最後に、その記録は若き世代へと託される。会社は消えても、働いた者の灯は消えない。これは、一つの企業の興亡を通して描かれる、人と誇りの物語である。