あらすじ
世界的な分子生物学者が集う国際学会が仙台であり、それに関連して松島沖の「ドック島」へのツアーが催された。招待客は六名のノーベル賞級分子生物学者と若い女性研究員の三枝アンジェリカであった。
島に向かうフェリー上でアンジェリカは、仙台医大一の谷教授から島のホテルの前身の人間ドックで起こった奇怪な殺人事件の話を聞く。名古屋医大の柄木田准教授が密室と化した控え室内で、鉄製の千手観音菩薩像に刺殺されたというのだ。施設はその後ホテルに建て替えられ陰惨な事件の痕跡はないというが、この恐ろしい事件にアンジェリカは戦慄する。
一行は島のホテルに到着後、羽島支配人夫妻らから歓迎を受ける。客達の部屋はバウムクーヘンを円錐形に八等分した形で円形に並んでおり、八室の中心には丸い中庭があった。各客室には時計回りに水星から海王星までの八つの太陽系惑星の名が付され、水星の間を除いて七人の客が一室ずつをあてがわれていた。
その晩一行は、ホテル側から豪勢な料理で寛大なもてなしを受ける。やがて宴も終わり皆寝静まったころ、ボン大学教授が密室と化した金星の間で頭骸骨を割られて殺される。ベッドに横たわる教授の頭上には、室内にあった直径一メートルの金星のレプリカが載っていた。
その後何者かによって島の電話とネット回線が切断され、モーターボートも焼かれる。アンジェリカはホテルから消えた叡智博士の行動に不信を抱くが、客たちは密室となった各惑星の間で次々と殺されていく。やがて、ホテルから消えた叡智博士の死体と思われる漂流物が島の沖合で発見される。さらにホテルが突然の火災で全焼し、アンジェリカが頼りとしていた一の谷までもが非業の死を遂げてしまう。