あらすじ
かつて私たちには、世界で一番正しいと信じていた、秘密の儀式があった。
夏祭りの夜、人知れず金魚を救い出し、小川に放つ「金魚姫の救出作戦」。
それは二人だけの、神聖なミッションのはずだった。
数年後。クーラーの効いた部屋で、スマホを眺めるだけの気だるい午後。
遠い祭囃子の音に、ふと、あの夏の記憶が蘇る。
懐かしさから友人に語りかけた私に返ってきたのは、予想もしない一言だった。
「それ、ただの環境破壊じゃん。YouTubeで専門家が言ってた」
正論という名のナイフが、ためらいなく聖域を切り裂く。
痛みも、悲しみもない。ただ、完璧な処理作業のように、思い出が廃棄されていく。
これは喪失の物語ではない。喪失さえ忘れ去られた魂の、冷徹な追放の記録。