あらすじ
経済が停滞し、未来が見えない閉塞感に満ちた時代。少年タケルの唯一の居場所は、薄暗いゲームセンターだった。父から受け継いだメダルケースを大切に持ち、純粋な努力が報われるメダルゲームの世界に安息を見出していた。彼の隣には、年金をメダルに変える日々を送るハルさんとゲンさんがおり、彼らにとってメダルは、失われた希望を取り戻すささやかな光だった。
しかし、その日常は突如として終わりを告げる。大手メダルゲーム運営会社「GEG」が、通貨価値の崩壊に乗じ、メダルを新たな基軸通貨とする「通貨大転換」を宣言したのだ。一万円札がメダル一枚という極端なレートで、既存の通貨の価値は事実上ゼロに。タケルが持つメダルは、ただのゲームの道具から、ずっしりとした重みを持つ富へと変貌する。
GEGは、メダルの管理を強化するため、指紋認証と紐づいたメダルカードの利用を義務付け、監視社会を築き始める。タケルは、メダルに込められた父やハルさん、ゲンさんとの思い出、そして自らの努力の結晶を、安易に企業のシステムに組み込まれたくないと強く願う。そんな彼の前に現れたのは、元GEGの開発者であり、企業の不正に幻滅して退職したゲーマー、シンジだった。
タケルが持つ「膨大なメダルの量」、ハルさんとゲンさんが持つ「長年の信頼」、そしてシンジの持つ「システムの知識」が結びつき、彼らはGEGの監視を逃れるため、メダルカードを拒否し物理的なメダルをリュックに詰めて行動を開始する。
彼らが守ろうとしていたのは、単なる富ではなく、メダルを通じて築かれてきた人々の「想い」だった。GEGによるメダル経済の破壊という絶望的な事態に直面しながらも、彼らはメダルを通じて築かれた信頼の絆を頼りに、不正の証拠を公に暴露する。
最終的にGEGは崩壊し、タケルは悟る。伝説のプログラマー、サトシ・ナカモトが初期メダルに仕込んだ「鍵」が意味していたのは、テクノロジーによる支配ではない、人々の信頼を基盤とする真に公正なネットワークだったと。無価値になったはずのメダルは、信頼の証として再び輝き始め、新たな世界の夜明けを告げるのだった。