あらすじ

信州水野病院の薬剤師谷仲霊華は、雷雲迫るある夏の夜、ひとり薬局の当直に就いた。調剤室に赴くと、そこに白衣姿の若い女性がいた。女性は杉崎妖音と名乗り、自分は大学病院から派遣されてきた薬剤師だと説明する。不審に思いながらも、霊華は妖音と二人で薬局の当直に就く。
 救急外来調剤の合間、妖音は霊華にある提案を持ちかける。交代で怪談話をしようというのだ。始めは逡巡していた霊華だが、徐々に妖音の話に引き込まれていく。妖音は水に溺れた女の悪霊の話から始めたが、霊華がたどたどしく語る怪談も同様に水死した女性に関するものであった。
 やがて深夜になると激しい雨が降り出した。妖音の最後の怪談は、圓魂緒という女性が運転する車が雷雨の中で水没し魂緒が溺死する話で、魂緒は後部座席から現れた女の悪霊に殺されたというのだ。実はこの悪霊とは、話の語り手である杉崎妖音自身のことであった。
 妖音には水野病院医師の木村蓮という恋人がいた。だが同じ水野病院の薬剤師である圓魂緒は妖音から木村を奪い、さらに妖音を埠頭から海に突き落として溺死させていた。妖音の怨霊はその恨みを晴らすため水野病院にやって来たのだ。その夜魂緒は薬局業務を終え帰宅していたが、妖音の怨霊は魂緒に「木村医師が病院で倒れた」と虚の電話をかけた。驚いた魂緒が病院に向かう途中、妖音は魂緒の車を水没させ魂緒を溺死させた。
 以前木村医師は、薬局の霊華に好意を持っていた。そのことを知った魂緒は、薬剤を入れ替えて霊華に間違った調剤をさせ、患者を死亡させていた。それが魂緒の謀略とは知らぬ霊華は、自室で睡眠薬を多量に服用し自殺を図った。当直で薬局に現れたのは霊華の生霊だったのだ。死に瀕しても霊華は当直業務の使命を失わず、その魂のみ病院に現れたのである。霊華の自死を病院に連絡したのは妖音の霊であった。
救急車が霊華を水野病院に搬送し、木村医師の必至の治療によって霊華は目覚める。

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アルファポリス
アルファポリス2025/08/11
  • 現在の作品薬局の怪談