あらすじ
不安で仕方ない。
足元から、ゆっくりと崩れ落ちていくような感覚。
二人きりになった部屋。
沈黙を切り裂くように、彼が低く告げた。
「君が……俺の心を、捉えた」
それは、本当に私のこと?
仮面に隠れて、見えていないのに気配だけで分かるの?
私を置き去りにして進むような、不穏で甘い空気。
それは──彼も女帝も理解している、大人びた世界の匂い。
その波に、私はまだ乗れない。
歯痒さを胸に押し込み、表情は崩さず頭の中に刻まれたマニュアルを読み上げる。
声には、できる限りの色気をまとわせて。
「私に恋をしなさい。あなたには決して届かない、高嶺の花よ?」
ゴクリ──と、喉を鳴らす彼。
「……誓います。君に夢中になる約束を、ここに交わします」
広い頑丈な肩、長い手足。
美しい顔のライン……
魅力的な男に、私はたった今、買われた。
「……俺の『マイヤ』君が好きだ……」
掠れた低音が、肌を撫でる。ぞくりと震えた。
お互い、まだ顔も素性も知らないまま。
そんな状態で結ばれる契約。
「毎週、この時間に君をここで待ってる」
……これは……現実……?
舞台は都心のラブホテル。
彼は、私の初めての客になった。
壊れそうなほど高鳴る胸。
この曲者を担当できるのか──不安しかない未来が、今始まった。
◾️◾️秘密のアルバイト◾️◾️ (シリーズ5部作)
舞台は新宿みたいな場所。年齢不詳な美女5人が幸せをねじ伏せていく物語。
“誰かじゃなくて、この人”と生きること。
◾️1弾【だってそんなに素敵だとは知らなかったから】
◾️2弾【女帝の素顔】
◾️3弾【夢路のぱくん】
◾️4弾【ホストの蘭】
◾️5弾【私の名前は峰不二子】