あらすじ
ある日、不意に神様がやってきました。全てを創りなおすと仰るので、そこに生きる人々は必死に抗いました。
今では神代と言われるその時代。戦争と呼ぶにはあまりにも一方的な存在に対し、何をどうやったのか人々は打ち勝ちました。
生き残った人々へ神様はなにか特別なものを授けましょうと、とても嬉しそうに言いました。
ある人は言いました「世界を定義する言葉が欲しいです」と。
神様は、ではこの声を授けましょうと言いました。
その人は語り手と呼ばれ、創造し、構築し、置換し、分解する力を得ました。言葉は可能性を拡大し、必要な力を語り手に与えます。
ある人は言いました「心が飢えることのない豊かさが欲しいです」と。
神様は、ではこの体を授けましょうと言いました。
その人はふるい手と呼ばれ、世界足る大地を耕し、文化を生み出す力を得ました。一が十へ、十が百へ、百が千へと今でも受け継がれています。
語り手はふるい手を守る盾であり矛であり、個の持つ力は強大でした。
ふるい手は産み出し、与え、満たす器であり、繁栄をもたらしました。
このままめでたし、めでたしと終われたのならどれほど世界は平和で愛に満ちていて、充足したことでしょうか。
そしてそうはならなかったからこそ、彼は生まれました。
英雄と呼ぶにはちっぽけで、凡庸と呼ぶには才能に満ちた彼が願いを叶える物語?
いえ、願う人の数だけ誰かの願いが叶わないのが世の常となればこそ、足掻いて藻掻いて、才能の限りを尽くして、命を燃やし、全ての障害を薙ぎ払い、目指し続けた先にある”きざはし”をつかもうと歯を噛み砕く物語です。
出会う人々は誰もが何かを願っています。
自らをひたすら練磨するもよし。
他者へ理不尽を押し付けるもよし。
何もかもが平凡で在り来たりなつまらない消費物として眺めるのもよし。
そのどれもが愛おしいからこそ、今日も日は天高く昇り、夜は心地よい夢を見るのですから。
*****
2023/6/6 書き溜めに追いつかれてしまったので、更新頻度が下がります。
週一話(土曜日を予定)は更新する予定です。
よろしくお願いします。