あらすじ
宮大工の家系の末裔であり、自身も木工細工師である篠宮咲(しのみや・さく)は、両親亡きあと、商人である叔父に利用され、隔離された作業場で品々を作るだけの日々を送っていた。
そんなある日、篠宮の家に、陰陽寮からの遣いがやってくる。彼は「朱雀院家当主の『番』として、咲を貰い受けたい」と言い、高額の支度金を提示した。そうして朱雀院家にやられた咲は、どこか浮世離れした青年・朱雀院或人(すざくいん・あるひと)と対面する。
はじめは「『番』なんて頼んでないけど」と渋っていた或人だったが、咲の篠宮での境遇を聞くと、その態度を一変させる。「ここで僕の『婚約者』として過ごすといい」と言ってから、彼は優しく付け加えた。
「でも、僕は、『番』は持たないと決めている。君を絶対に『番』にはしない──だから君は、安心して、ここで自由に過ごしてね」と。
これは、細工師としての生き方しか知らない孤独な少女と、秘密を抱えた孤独な青年の、最初で最後の恋のおはなし。
※カクヨムにも投稿しています。8月中完結を目標に不定期更新予定。