あらすじ

プロローグ 「誰に託しますか」 ――まったく、思ったよりも穏やかな最期だったわ。  肉体という檻が崩れ去り、魂だけが残った時。  そこに痛みも重みもなく、ただ、静かで心地よい闇が広がっていた。 「これで、ようやく眠れる……」  老いた魔導貴婦人、リュシア・オルレアン。  魔法の黎明期を支え、数多の戦火を越えてきた彼女は、  病床の中で小さく息を吐いた後、誰にも看取られず旅立った。  けれど。 「……リュシア・オルレアン。あなたの魂は、まだ解放されていません」  どこかで聞いたような、けれど思い出せない声。  目も耳もないはずの空間に、それだけが確かに響いた。 「最後の“継承先”が見つかっていません。魂の還流は不完全です」  ――継承先?  そうだ。私の魂にはまだ、伝えなければならないものがあった。  けれど、誰にも託せなかった。  力に魅せられ、破滅に向かう者ばかり。  誰かのために魔法を振るう、そんな子は……。  ――いた。  私の中にだけ、確かに残っている“光”の記憶。  この世でも、次の世でも見つけられなかった“あの子”。 「……見つかりましたか?」 「ええ。ようやく、ね」 「では――その者に、最後の力を託しますか?」  リュシアは頷く。すべてを背負う覚悟ではなく、  未来を信じる、やさしい眼差しで。 「お願い。あの子に……私の“全部”を、届けてちょうだい」  次の瞬間、光が弾けた。  魔法の紋が彼女の魂を包み込む。  この“還流”の旅の先に待つものが、  未来を変える魔導となることを――彼女はまだ知らない。

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カクヨム
カクヨム2025/08/08
  • 現在の作品余生を魔導に捧げたマダムは、転生先で少年にチートを継がせる