あらすじ
王城の片隅で静かに働く下級女官・**綾音(あやね)**は、華やかな貴族たちの中でひっそりと目立たず生きていた。美しい着物も似合わないし、家柄もただの小藩の娘。誰からも気にされることなく、毎日黙々と茶を淹れ、書簡を運ぶだけの日々。
「私なんて、いてもいなくても同じ……」
そう思っていたある日、なぜか冷徹無比と恐れられる将軍・朧月(おぼろづき)様が、毎朝綾音に手ずから茶を淹れてくれるようになる。
「……香りが落ち着くだろう。今日の仕事が終わったら、一緒に一服しないか?」
「えっ……? なぜ将軍様が、私に……?」
感情を表に出さない寡黙な将軍が、なぜか自分だけに優しい。しかも、彼の腹心の護衛である寅丸(とらまる)にもやたらと世話を焼かれ、以前助けた記憶喪失の青年・湊(みなと)からも懐かれて――
「目立たず静かに生きたいだけなのに、なんでみんな私を気にしてくるの……?」
孤独に慣れた女官の、戸惑いながらも少しずつほぐれていく心。
――将軍様の淹れる一杯のお茶には、誰にも言えない深い想いが込められていた。
不器用な将軍と地味系女官の、じれ甘でほっこり溺愛スローラブ。