あらすじ
家の中の居場所なんて、トイレの中か、お風呂に入る前の脱衣所と、匠君が帰ってくるまでの寝室だけ。こんな風になったのは、いつからだろう――。
経理の仕事をしながら絵本作家になることを諦めきれず時間を作っては絵と向き合う樋口多実(30)。夫の匠はそんな多実のことが気に入らず「それいつお金になるの?」と心無い言葉を浴びせる。
そんな折、ひょんな場所で、高校時代現代文を担当していた先生・辻村と再会する。それ以来、恋愛と呼べるかはわからない、静かで、でも否定のできない感情が多実の中に溢れていく。心でつながっていたいと思う――これは"不倫"なの……?
一方、先生には誰にも言えない秘密があり、それは次第に、多実の幼い頃の記憶と恐ろしい悪夢に、どこか重なっていき――。
*この作品は「第1章 再会」「第2章 秘密」の二部構成です。
【主な登場人物の紹介】
・樋口多実(30)
出版社で経理の仕事をしつつ、単発のイラストの仕事なども空いた時間にしながら絵本作家になる夢を諦めきれない。大学時代には積極的にコンテストなどに応募、小さな賞も受賞したが、母親の病気・看病生活を境に一度絵から離れざるをえなくなる。入院費を稼ぐために就職に向け資格勉強をしていた頃に夫・匠に出会って結婚。旧姓・五十嵐。
・辻村はやと(37)
多実の高校時代の現代文の担当をしていた元教師。礼儀正しくちょっと融通の利かない性格。十三年前、教師を辞め、今は知り合いの通信教育の会社で働いている。
・樋口匠(31)
多実の夫。大手コンサルファームから、三年前、上司の立ち上げた少数精鋭の新しいコンサル会社に転職。エリート・キャリア志向。
・水島宏美(35)
経理部の多実の同僚。一児の母。
・有川潤(28)
出版社の児童書部門の編集担当。もともとはファッション部門にいたがあることがきっかけで異動。
・小早川茜(30)
多実の高校時代の同級生で一児の母。もともとは広告会社勤務のバリキャリだったが今は専業主婦。
・若松遥(30)
多実の小学校時代に奈良から引っ越してきた同級生。医療事務の仕事をしながら舞台女優を目指している。
*表紙は標準画像から選択させていただいております。