あらすじ
とあるゲーム作品における最高に無能な男に転生した主人公。
能力値は低く、特別な要素もない。非戦闘系以外での活躍が出来るのかと言われればそんな事はなく、弱くて使えないこと以外これといって特出することのない男。
初期キャラであるが故に誰もが手に入れて、そしてすぐに手に入るキャラと入れ替えて倉庫の肥やしになることが確定するキャラ。
そんな存在に転生したことを自覚した男は、転生者であるが故に無能なままでいる訳にはいかないことを知っていた。
どうなろうとも命を懸けなければ無様に死ぬ羽目になることを知っていた男は、無能なこの体なりに出来る最善策を取るために二つのスキルを手に入れる。
前世では産廃と、使う価値がないと言われたスキルたちを。
『不死身』
一定時間HPがゼロ以下にならないが、その代わりにダメージを受ける度に気絶判定が入り0.01%に成功する必要がある。またスキル発動後、敵からのヘイトが極端に下がり全ステータスが百分の一になる。
『無敵』
一定時間HPが減少しなくなるが、スキル発動中に受けたダメージは累積されて効果終了時に回避不可なダメージとして襲い掛かる。またスキル発動中のヘイトは低下し、受けたダメージに伴う永続的なステータス低下の呪いが生じる。
ゲームでは使う余地がないスキルで、現実になったこの世界では尚更使う気になれないスキルたち。
だが無能なその体で少しでも良い未来へと進むために、なにより何も出来ないまま死んでいく道を避けるために使うことを選ぶ。
その先に良い未来が齎されるのだと信じて。
それが転生した自分の役目なのだと考えて。
男は自らの命を使い潰すことを選択した。
周囲からの制止も、上位存在からの説得も、敵からの憐れみや同情も全て振り捨てて、それこそが己の役目なのだと信じて。
そうして世界は救われた。
男の所属する勇者パーティが世界を滅ぼそうとした魔王、そしてその背後にいる邪神を打ち倒して世界を破滅の未来から救った。
本来ならば生じていた欠員も犠牲もなく、男の知っていた未来よりもより良い男の望んでいた通りの結末を迎えることが出来た。
「じゃあ、さよならだな」
男は静かにそう考えた。転生者という異物である自分は、汚点と言っていい無能な自分は、輝かしい未来に不要だと思って。
だからこそ消えるのが最後の役目なんだと思って。
男は誰にも何を告げることなく、勇者パーティから夜逃げするように去っていく。
平和になったこの世界の何処かにあるであろう、そこそこに人がいるようでいない隠居するには十分な田舎町を目指して。
自分がどれだけの影響力を持っていたのかを知らないまま。