あらすじ
同じ会社に勤めていながら、顔を合わせることもなかったふたりの女性――
事務部でひっそりと働く白川若葉と、社内でも名を知られる凛とした上司・黒川若菜。
日常の交差点では交わることのなかったふたりが、ある日偶然に目を合わせる。
けれどその時、ふたりはまだ知らなかった。
自分たちが、もうすでに“別の名前”で出会っていたことを――。
ネットの中で「茅ヶ崎渚」として活動する若葉は、小説投稿サイトで憧れの作家「結衣と姉 希望の王」に出会う。
彼女の書く物語に心を揺さぶられ、勇気を出して送った一通のダイレクトメッセージ。
それがきっかけで始まった、名前も顔も知らない“渚”と“ベルおねーちゃん”の文通のような関係。
現実の世界では、少しずつ距離を縮めていく若菜と若葉。
仕事の合間に交わす短い会話、何気ないランチのひととき。
そしてネットの世界では、小説という架空の場所を通して、深く強く繋がっていく“渚”と“ベルおねーちゃん”。
同じ人だと気づいてしまった若菜は、その事実を伝えるべきか悩みながらも、ふたつの世界で育まれる友情と信頼に、静かに心を揺らしていく。
この想いを、どの言葉で伝えればいいのか――
現実の自分と、小説の中の自分。
本当の「わたし」はどこにいるのか。
誰かと心を通わせることのあたたかさと、ほんの少しの切なさを抱えながら、若菜は最後の一歩を踏み出そうとしていた。
これは、ふたりの女性が“物語の中”と“日常の中”で静かに出会い、
少しずつ、確かに、お互いを大切に想い始めていく物語。