あらすじ
夜の峠を走る理由は、誰かに見せるためじゃない。
ただ、自分が信じる“走り”のために。
モビリティ大学校に通う整備士の卵・風間玲は、亡き父が遺したZN6型トヨタ86と共に、鵠沢(くぐさわ)と呼ばれる峠を走り続けていた。
──そこは、サーキットライセンス保持者のみが全開走行を許された、異例の“合法峠”。
ある晩、峠で出会った一台のZ34フェアレディZ。その完成された走りが、玲の心に火を点ける。
そのZのオーナー、秋月真希。26歳の整備士にして、現役の女走り屋。
AT車ながら、誰も寄せつけない速さを誇る彼女の存在が、玲の運命を少しずつ変えていく。
同室の佐伯慶介。
SNSで拡散される走行動画。
歪んだ“MT・FR原理主義”が支配する青雲スポ車界隈──。
「ATだからって、何だよ」
そう言い返せる“結果”を、玲は静かに重ねていく。
これは、亡き父との約束を胸に、
偏見と誤解にさらされながらも、自分のスタイルを貫こうとする一人の青年の物語。
峠で交差する思惑と因縁。
合法であるがゆえに、リアルに突きつけられる“速さ”の意味。
その夜、彼は確かに走り切った──誰にも媚びず、ただ前へ。