あらすじ

"Are you a fake ?"  スマホの画面に表示された文字を目で追って、発音を真似ると軽い音と共に赤くマルがつく。下に和訳が出る。あなたはニセモノですか。変な文だけど、英語学習アプリにはよくあることだ。この前も、おばのクローゼットにはテレビがあります、なんて文が出てきた。クローゼットにテレビ?と思って検索したらちょっとした部屋だった。海外すごい。だから、この表現だって向こうではジョークかなんかなんだろう、多分。  "Are you a fake ?"  無料ゲームの合間、流れるはずの動画広告は動かずに、ただ白い文字だけが浮かんでいる。黒い背景のせいで映り込む自分の顔。その手前にどこかで見た気がする文字が浮かんでいたけれど、思考する前に指が訓練されたような動きで画面端に出るバツをタップする。画面がゲームに戻ってしまってから、追いかけるように、あなたはニセモノですか、と声がした。 「ニセモノだーれだ!」  バスの中、妙に大きく聞こえた声に驚く。教室のテンションそのままで乗り込んできた小学生たちの無邪気な声。TPOという言葉がブレーキにならないお年頃。ブレーキだらけで動けない、思考を声にするまでにいくつもの関所が出来て黙るしかなくなってしまった私は誤魔化すようにスマホをいじる。Time、Place、Occasion。時間と場所と場合ね。軽い失望が、かじかんだ脳に滲む。もっとカッコいい言葉の頭文字かと思ってた。ニセモノだーれだ!イヤホンも、鼓膜も、心に言葉が届くのを防いではくれない。ホンモノって、なんだろう。

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エブリスタ
エブリスタ2024/12/15
  • 現在の作品ニセモノだーれだ。