あらすじ
大学院修士課程で植物酵素の研究に没頭していた村本拓真は、学会発表を横取りされた屈辱の中で新たな成果を出そうと無理を重ね、ついには大切に培養していた変異体ストックを管理ミスで死滅させてしまう。研究以外をおろそかにしていたツケが一気に噴き出し、心身の限界を迎えた彼は、絶望の中で意識を失う。
目を覚ました先は、見知らぬ森の中だった。
視力は回復し、身体は若返ったように軽い。そこが“異世界”だと気づくのに、時間はかからなかった。
手探りの中で判明したのは、自身に宿った「鑑定」スキルと、かつての知識が確かに役立つという事実。水、草、空気――目に映るすべてを調べ、解き明かすことでしか、自らの生存は保証されない。
そして、死を覚悟するような魔物との遭遇。逃げる暇もなく身構えたその瞬間、拓真を救ったのは、ひとつの小さなスライムだった。
魔物としては弱小とされるその存在は、敵意を見せるどころか、なぜか彼のそばに寄り添う。言葉は通じずとも、そこには確かな知性が感じられた。
危険が去った洞窟を住処とし、拓真は仮の拠点を築く。
現代では不可能だった“手で触れる探究”が、ここにはある。
菌類が存在しない異世界。分解や発酵さえ魔素に依存したこの地で、科学と魔法の境界を跨ぐように、彼の研究生活は始まっていく。
これは、ひとりの研究者と、一匹のスライムが異世界を読み解く、“知識と好奇心”の魔素ファンタジー。
『異世界スライム研究日誌』、開幕。
※一部実経験を基に描写している箇所がありますが、現実的に不可能な描写があります。登場するすべてのものは創作上の創造物であり、現実世界には関係ありません。