あらすじ
高校三年の春に転校してきた草壁一彦は、写真部の部室前に展示された男のポートレートを見てひと目で恋に落ちる。被写体の男の職業はグラフィックデザイナー? いや、建築士か。
まさに一彦の好み、ど真ん中。
撮影者は写真部顧問の白川健太。被写体の男とは血のつながらない兄弟だという。
「草壁君、申し訳ない。実を言うと、俺は嘘をついた」
「は?」
「あの写真、俺の兄貴じゃなくて、俺の彼氏です」
なんだよ彼氏か。あ? え? 今なんて言った?
ポートレートのいい男と白川にも興味を抱いて、写真部に入部する一彦。
写真の心得はあるし大好きなフォトグラファーもいる。でも自分の撮る作品に自信がない。自分のふるまいにも自信がない。なぜなら、過去のある出来事がきっかけで心に蓋をしてしまっていたから。
――俺は昔から、人との距離感を見誤ってばかりだ――
あるとき一彦は、思いがけない白川との共通点を知って彼に急速に惹かれていく。
「今のキスは、君からだよね?」
「え?」
「だって俺からキスしたとなったら、俺、教師をクビになるから」
気持ちが揺らいだまま参加した夏の撮影合宿。そこで一彦は自分の過去と向き合うことになる。
――またひとつドミノが倒れて、思い出したくない記憶がよみがえる。
ある人物との苦い再会、過去のトラウマ。集中できない受験勉強。
終わらせたい気持ち、壊してほしい気持ち、すがりたい気持ち。
「先生、俺がK大に合格したら、遠くなっちゃうね」
「わざと落ちたりするなよ」
そして迎える合格発表の日。一彦と白川の未来は――
心に蓋をしていた一彦が、白川との関係を通して自分の人生を肯定していく一年間(と少し)のお話です。
◆表紙イラスト 水月双さま ※minaduki964(※→@)