あらすじ
それは、高くなだらかな丘の上にあった。
“風の丘”とよばれるその丘は、青い草原がゆったりと曲線を描いて広がり、一年を 通じて、清らかで涼やかな風が、これまたゆったりと、おだやかに流れている。 風の流れは、時おり低地へと銀鈴のようなやわらかな少女の声を運び、ひとびとはうわさした。 風の丘には、愛くるしい少女の妖精が、あるいはいとけない子どもの魔女が棲んでいる──と。
「たいへん! たいへんだわ!」
今日も彼女は大あわてし、少年のもとへ飛び込んでくる。おとなのようなふりをした少年は、にがわらいを浮かべてみせるのだ。
「はいはい、今日はいったい、なにが大変なんですか」
ほっこり、ときに切なく、そしてあまく優しい“風の丘”の話。