あらすじ
沈黙の食卓と、5万円の距離
『沈黙の食卓と、5万円の距離』
湯気のむこうに
言葉にならなかった気持ちが
ふわりと浮かんで、消えていく
沈黙は、怒りではなく
不器用な愛の、裏返しだった
月に一度の外食よりも
ささやかな5万円よりも
重くのしかかるのは
「遠慮」と「誤解」と「ためらい」
笑い声のない食卓で
味噌汁だけが温かく
家族という形を、かたちづくる
「ありがとう」が言えず
「ごめんね」が届かず
それでも同じ鍋を囲むことが
祈りのように感じられた夜があった
5万円は
壁になることもあれば
橋になることもある
それは、値段じゃなく
どんな気持ちで差し出すかということ
言葉を越えて
箸が伸びるたび
少しずつ、距離が縮まっていく
沈黙の先に
もう一度、食卓に
笑い声が戻ったとき
やっと気づいた
本当に欲しかったのは
お金じゃなくて
「一緒に生きる」という実感だった