あらすじ
景司は、理屈よりも「勘」と「気合」で生きてきた不器用な料理人。母に手渡された予備のヘルメットと共に旅立った青年時代、山の雨宿りで出会った少女・真弓との偶然の出会いが、景司の人生を少しずつ変えていく。再会、文通、そして別れ。料理という形のない仕事に、彼は自分なりの“正しさ”を込めて鍋を振るい続ける。やがて彼の勘は、村の食卓を支え、絵本の中に描かれ、次の世代へと受け継がれていく。
時代遅れでも構わない。レシピも、要領も、成功も知らない。だが鍋の底には、いつか誰かの人生をあたためる“光”が残る。人生の終盤まで己を曲げなかった男の、静かであたたかな青春譚。