あらすじ

定年を間近に控えた松本景司、六十一歳。中堅商社「野口商会」で三十八年間勤めあげた彼の口癖は、昭和のヒーローたちの決め台詞だった。 「マグマ大使ー。」と窓を開けて叫び、失敗の夜には「コウモリさん、コウモリさん。」と空に祈り、「いざとなったら玉を出せ。」と覚悟を決める。誰にも意味は通じなくなったが、それらは景司にとって困ったとき八策と呼ばれる生きる知恵だった。 時代が変わり、言葉は通じず、若者たちには呆れられ、やがて忘れられていく、はずだったが、景司の静かな誠実さと背中に、やがて若手が信頼を寄せ始める。 そして迎えた定年の春。自ら防具のように身につけていた昭和を脱ぎ捨て、職場を去る景司。だが、再び誰かが困ったときに彼はふらりと現れる。 役職もヒーローもいない令和の職場で、人を支え続ける名もなき戦士の人生を、しみじみと描く。

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エブリスタ2025/08/01
  • 現在の作品そのとき、マグマ大使は来なかった