あらすじ
やっぱり、草ちゃんは行ってしまった。
菜乃花は出かけて行く夫の背中を見送り、玄関のドアを閉めると、ひとりで大きく息をついた。
定期的に、というほど規則正しくはないけれど、半年以上の間隔は開けず、夫の草平は男友達と温泉旅行に出かけて行く。夫婦だからと言って、別にそこまできつく束縛しようとは思わない。時には友人と出かけて息抜きしてくることだって大事だ、と、菜乃花は自分に言い聞かせる。でも、知ってもいるのだ。夫が一緒に泊まっている相手は、同性愛者だし、夫を好きだ。誰に聞いたわけでもないし、数度会ったことのあるだけの関係の相手だけれど、分かるものは分かる。あのひとは、悲しくなるほど草平のことしか見ていなかった。