あらすじ

雨が降る教室で、クラスメイトの柚が突然姿を消してから三週間、橘だけが彼女の存在を覚えていた。ある日、謎の球体が彼の手元に現れ、「私を探して」という柚の声が頭に響く。球体の力で時間を遡り、柚がまだ存在する過去へ戻った橘は、彼女と再会するが、彼女は多次元を知覚できる特殊な存在であり、やがて何者かに連れ去られてしまう。彼女は秘密裏に行われていた多次元移動実験の被験者にされていたのだ。  橘は球体の導きで異なる世界を旅する。彼女と恋人だった世界、敵同士だった世界、兄妹だった世界……それぞれの次元で“もしも”の可能性を体験するが、本当の柚には辿り着けない。やがて橘は、世界自体が巨大なシミュレーションで構成されているという真実に気づく。柚はその研究施設の中で眠らされ、身体を装置につながれたまま、意識だけが多次元へ放たれていた。  現実世界に戻った橘は、球体と柚との量子もつれによる絆を力に、研究施設へ単身乗り込む。心を通わせることで柚を目覚めさせ、崩壊するシステムから共に脱出する。その後二人は逃亡生活を経て、小さなアパートで穏やかな日常を再び始める。柚は実験の影響で多次元の風景を描くようになり、球体も静かに脈を打つだけの存在に変わっていた。  柚は球体を手放し、「いま、ここ」に生きることを選ぶ。橘も決意する。「君のいない現在には、もう戻らない」と。虚構と現実の境を越えて、二人はこれからも繋がっていく。量子もつれのように、永遠に。

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エブリスタ
エブリスタ2025/08/02
  • 現在の作品もう一度、君のいない現在へ