あらすじ
大学進学のため神戸・須磨にやってきた青年・景司。
海辺の下宿に住み、静かな青春を過ごす彼は、ある日、文学ゼミで出会った真弓という女性と心を通わせる。
淡路島へ渡る千鳥の声、波音、沈黙の中に宿る感情。
二人は互いに多くを語らずとも、海のように広がる気配のなかで絆を深めていく。
だが真弓はやがて遠い進路を選び、景司のもとを離れる。
夜ごと聞こえる千鳥の声に目覚めながら、景司は心の中に「呼んでも届かぬ名」を抱き続ける。
再会のない再会、答えのない返事
やがて時は流れ、彼はその想いを風にのせ、また誰かの人生を照らす静かな存在になってゆく。
誰にも知られず、人を支える、そんな関守のような青春が、ここにある。