あらすじ
昭和二十年、終戦間際の東京。日赤病院で働く看護婦・滝川千代は、幼なじみである誠と結婚を約束していた。ある日、彼に招集令状が届く。出征まで残されたわずかな時間、ふたりは慌ただしく祝言を挙げ、月明かりの夜、初めて肌を重ねる。静かな夜気のなか、言葉よりも視線と手のぬくもりで交わされる、ひそやかな愛のかたち。
そして一週間後――彼は笑顔で戦地へと旅立った。
■登場人物紹介
滝川 千代(たきがわ ちよ)
23歳。日本赤十字社の看護婦。しっかり者で芯が強く、淡々と日々を過ごしているが、心には繊細な感情を秘めている。戦争で家族を失い、仕事に打ち込む中で、幼なじみの誠との絆が深まっていく。
佐伯 誠(さえき まこと)
24歳。尋常小学校の教員。穏やかで誠実な性格。千代とは幼い頃からの幼なじみで、互いに心を寄せながらも口にはしないまま時を重ねていた。招集を受けたことで、彼女への想いを確かなかたちにしようと決意する。