あらすじ
まだ暑さの残る初秋、マンションのベランダから、ちづるが声をあげた。
「山だ。しかし、中が透きとおっているぞ」
僕がベランダに出ると、そこから見えたのは……。
僕は一ヶ月前、公園でちづるを拾った。
『この世でいちばん美しいもの』を探して旅をしていると言う。
「温かく暗い穴から出てこないでいるわが君に、『この世でいちばん美しいもの』を差し上げて、外はおそれるほど怖くはないのだと、美しいものがあるのだと、お伝えしたいのだ。
ほかのだれが望まなくとも、わが君に外の世界を見ていただきたい」
ちづるはそう言った。
僕はたったひとつだけ、この世でいちばん美しいものを知っていた。
それは星がひとつ入ったように輝く、小さな黒い目。
その目の奥に、美しいものをいくつも閉じこめていた。
僕とちづるの、ベランダから見えたものの話。
2024.9.5. 了
(2024.9.16.加筆修正済)
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三行から参加できる 超・妄想コンテスト第228回「山」応募作。