あらすじ
世界は今、重大な選択を迫られていた――現実に生き続けるのか、それとも「電子世界」へと移行するのか。
少年・ユウトは学校が休みのある日、自宅のテレビで「世界統一会議」の中継を眺めていた。その日は、幾度も繰り返された会議。混乱していた世界の意見は、やがて二つに絞られていた。
ひとつは、現実の尊厳と人生の価値を守るため電子世界への移行に反対する者たち。もうひとつは、全ての問題を解決し“完全な幸福”を与えるとして電子世界を推進する者たち。
討論は静かに、だが確かに世界の行く末を決めていく。
どちらの主張も正しく、どちらも怖い――そう感じたユウトは、自らの感情の行き場を失い、ただ問いを胸に抱いたまま、画面を見つめ続ける。
そして朝。
彼は再び静かな世界に目覚める。青空、学校、友人たち。
だがその日常には、「電子世界」の影も形もなかった。まるで、そんなものは最初から存在しなかったかのように。
しかし、真実は違った。
人類は既に電子世界へ完全に移行しており、その記憶すらも失っていた。
誰もが気づかぬまま。